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銀月アパート

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Kが銀紙で作った星は、まだあの部屋の窓に貼ってあるだろうか。

しっくいの白壁に朱色の瓦屋根。二階建てだが、要所に丸窓やフランス窓、
バウハウス風のスクエアな広い窓を持つ洋館風の古い木造アパートは、
白川疎水によく似合う瀟洒な佇まいで半世紀以上そこに建っていた。

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そこに住むのはどんな人なのだろう。興味が尽きなかった。

噂では、昭和のはじめに京大の先生達の宿舎として建てられたという。
いや、学生のためのアパートだよ、という人もいる。

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このアパートに2年住んだ。
Kがそのアパートの古株だった縁で、
空いたら必ず入ると管理人さんにお願いしてあったのだ。

Kは、このアパートでいちばん広く、朝日がたっぷりと差し込む
たしか、南7号に住んでいた。僕は、北14号。それとも13号だったろうか。

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美術部だった僕は、バイトを斡旋してくれるKのために、
ブライアン・フェリーの肖像をリキテックスで描いてあげた。

同じ美術部だったKは、銀紙の星を自分の部屋の大窓に貼った。

Kの部屋に、赤いランプひとつだけ灯し、遅くまで
PILやストラングラーズやピーターガブリエル、
そしてTHE WHOのレコードをかけて、遊んだ。



ちょっと、アンディ・ウォホールのファクトリー気取りだった。

ある雪の降る夜、バイトから帰ると、階段の上に
キリストの衣装に身を包んだ、長髪の男がじっと立っている。
(これ、ほんとの話)お化けではなく、どっかの劇団のコだったのかもしれない。
そんなクレージーなアパートで、
少々のロックなど、ここちよいBGMに過ぎない。
そこら中の部屋で、深夜まで音楽が流れていた。

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あれから、僕らが住んだアパートはいくつかの雑誌や書籍で紹介され、
そして、ついさっき、映画「クローズド・ノート」のロケ地になっていたことを知った。

と、ここまで静かな調子で書き進んできたのに、
やっぱり主演の沢尻エリカさんの舞台挨拶でのドタバタ事件が頭に浮かんで、
ププッとなっちゃうのは・・・僕の性格だよなあ。

僕の隣に住んでいた女子は、あとで僕のカミさんになりました。

1階は、いまフェアトレードのシサム工房のオフィス。この事実、かなりうれしいです。

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いまいちばん自転車で走りたい街、
京都を離れて25年以上が経った。

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4半世紀前の玄関。今も変わらない。

無性に帰りたくなる。そんなときもあります。
春。銀月アパートのしだれ桜が咲くころ、帰ってみよう。



写真は、レトロな建物を訪ねて」のgipsypapaさんのご好意でいただきました。
gipsypapaさん、ありがとうございます。
Commented by PJ at 2007-11-30 14:20 x
ファンタジーだなぁ・・そしてロマンです。
京都は瞑想が迷走しているような不思議なたたずまい。
nobさんなら金閣寺に住めば便利だったのに、なんてちょっと思ったりもしましたが^^
こんなアパートや昔ながらの路地裏がそこここに点在してるのが今も昔も変わらぬ京都ですね。
私も学校が近かった上に、学生時代の元カレがK大生で京都に下宿してたから週の半分以上は京都に行ってました。
学生時代の思い出って、年月を経てセピア色に変わっても、思い出をスライスして、し尽くして、どんどん脚色していくものですよね。
自分一人の夢の世界だし、永遠に壊されることなく神聖な世界ですね。

奥様とは学生時代からのご縁なんですね。
思い出の中の人とその後の人生も添い遂げられるって、素敵だし羨ましいです。
nobさんがいつまでも若くて少年のようなわけが分かった気がします。
だって、若かりし頃を共に過ごした方が今でも一緒にいて下さるんですからね。

私は晩秋の渡月橋を最後に終わっちゃいましたよ。
だから今でもたまに京都に行っても渡月橋だけには行きたくありません。
楽しかった学生時代の思い出の中で一点だけ辛い思い出です。
Commented by nob06 at 2007-11-30 20:14
PJさん。
>自分一人の夢の世界だし、永遠に壊されることなく神聖な世界ですね。

そうですよね。年月とともに、どんどんきれいに思えてくる(笑)
京都時代は、行きたかったガッコーから蹴られて、
転がりこんだ先の大学に肌があまり合わなかったってこともあり、
はんぶんウツとしてました。

そんな中で、この銀月アパートを起点にしたバンドな日々は、
楽しいっていうか、なんというか、
ここに書いたとおり、まあ不思議な日々でした。

そのころ流行っていたサーファー&ユーミン系の
正しい(マジに!イヤみなく)連中は、こぎれいなマンションか
自宅(強し!!)に住んでいて、
銀月アパートメントはアート系ブンガク系ロック系活動家系の
連中が中心。
たぶんそんな住人たちが、僕が東京に来たあとも、
脈々と住み継いできたのでしょうね。

その空気感が、行定監督の「クローズド・ノート」のロケ地になった
理由なんでしょうか。この映画で、いつも噂されていた取り壊しの話が消えてくれることを祈ります。甘いか・・(笑)


晩秋の渡月橋。絵に描いたような別れのシーンが・・・うるうる
Commented by HIRO at 2007-12-01 15:16 x
浪漫だなぁ~。
京都を離れて25年ですか。無性に懐かしくなるんでしょうね!
自転車が走りやすい街ではありませんが、機会あらばぜひ京都へ起こしください。
Commented by nob06 at 2007-12-01 21:43
HIROさん。
年月を経るほど、京都のことが懐かしくなってきます。
1回生のころは、まだ市電が走ってましたからねえ(笑)。

できれば、また住みたいぐらいです。今度は中京のほうの
町家もいいかなと・・。
ライブハウスの磔磔も拾得もまだ現役みたいだし、
休みみつけて行くくしかないすねえ。 
そのときはぜひ、ご一緒しましょう。

Commented by jintaro_jin at 2007-12-03 11:31
僕がガキの頃生まれ育った白金にも
長屋もアパートもありました
それが無くなって行くのは寂しい思いでしたね
原宿や代官山の同潤会アパートも中学校時代からの
思い出の場所
今は心の中の風景として残っていますが
やはり思い出の場所が残っているって素晴らしい事ですね
Commented by nob06 at 2007-12-04 00:02
jinさん
白金のあたりは、
バブル直前まで古い建物がたくさんありましたよね。
同潤会アパートがまだあった頃の代官山も表参道も、
青春後期の思い出がたっぷりとある場所です。
時代の流れとはいえ、
修復すればまだ使い続けられる建物が、
老朽化の名目で取り壊されるのが惜しいですよね。
今この辺りが生活エリアですが、
走ったり歩いたりしていてもなんかしっくりこないのは、
僕が年をとったせいだけではない気がします。
Commented by アランスミシー at 2007-12-12 14:55 x
Zoeより聞いてやってきました。京都在住の私。宝ヶ池にはあれから何度か行きましたし、岩倉あたりもいいですが、あのこゆ~い日々とともにある銀月は特別ですな。だから全く行っておらないです。思い出がつぶれてしまうと怖いので。
ところがこのきれいな写真を見てびっくりしました。
あの、たたずまい。いけてるねぇ。
Kとのホモじゃないかと思える日々。
ある朝、銀月のKの部屋に行くと、狭いベッドにほんとに男と寝てたんだよ。
D大のギタリスト。彼は女子と同棲してたからホモではないと思うけど。
勝手にURLはらしてもらうよ。ごめんな。
Commented by nob06 at 2007-12-14 01:01
アランスミシーさん。
いっす。ひさしぶり。銀月、きれいでしょ?
もちろん写真をとられたgipsypapaさんの
視点と腕がいいからですが。

Kも、あのころ、そうとう変わってたしねえ。
「えーやんけ」って、男をとっかえひっかえしてた。ノンケやのに。

D大のギタリスト、Mね。
あいつがシャッフルでバイトしてた関係で、
おれらもあっちの世界に行って。
ま、そこに兄貴がいたからだけど。

URL、オッケーです。おいらも、あま中と、弦月にリンクします。






by nob06 | 2007-11-30 06:14 | BACK TO 京都 | Comments(8)